補聴器を購入する前にVol.5|補聴器の購入で受けられる公的補助・医療費控除
耳の病気|2026.08.24前回のコラムはこちら
【コラム】補聴器を購入する前にVol4.|補聴器のメンテナンスは「毎日のお手入れ」と「音の再調整」が肝心
補聴器購入に伴う公的補助
補聴器の必要性を感じ、自分に合うものを見つけ、メンテナンスの方法も理解できたけれど、実際に購入するとなると「費用のこと」が気になる方も多いと思います。
「補聴器は高価だと聞くけれど、少しでも負担を減らす方法はないかしら?」
「国や自治体からの助成金はあるの?」
そんな疑問をお持ちの方も多いかと思います。
実は、補聴器の購入にあたっては、条件を満たせば受けられるいくつかの公的な支援制度があります。シリーズ最終回となる今回は、知っておくと安心な「補聴器の購入を支える制度」について、詳しくお話ししていきます。
補聴器の支援制度にはどんなものがある?
補聴器の購入をサポートする制度は、大きく分けて以下の3つがあります。
- 医療費控除(税金の還付)
- 障がい者総合支援法による補装具費支給制度(補助金の支給)
- 自治体独自の助成制度
それぞれ対象となる条件や、申請の方法が異なります。一つずつ見ていきましょう。
1.医療費控除を活用する
まず、最も多くの方に活用の可能性があるのが「医療費控除」です。補聴器を「診察を受ける際などに医師が必要と認めたもの」として購入した場合、その費用が医療費控除の対象になります。なお、所得税を払っていない方は対象外です。
医療費控除とは?
1年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費の合計が10万円(所得が200万円未満の場合は所得の5%)を超えた場合、確定申告をすることで所得税の一部が戻ってきたり、翌年の住民税が安くなったりする制度です。
補聴器で控除を受けるための手順
ただ補聴器を買っただけでは、医療費控除の対象にはなりません。大切なのは、「購入前に医師による診断と書類作成が行われていること」です。
具体的には、以下の流れが必要になります。
- 耳鼻咽喉科を受診する:「補聴器相談医」の資格を持つ医師に相談してください。
- 書類の発行:補聴器相談医が「補聴器が必要である」と判断した場合、所定の「補聴器適合に関する情報提供書」を作成します。
- 補聴器の購入:医師が作成した書類を持って、補聴器販売店で補聴器を購入します。
- 補聴器の領収書を受け取る:販売店から、医療費控除用の領収書を受け取ります。
- 確定申告:翌年の申告時期に、医師の書類と補聴器の領収書を添えて確定申告を行います。
2.障がい者総合支援法による支給制度
難聴の程度が重く、一定の基準(身体障がい者手帳の交付基準)を満たしている場合に受けられる制度です。
制度の仕組み
この制度では、原則として費用の1割を自己負担することで、補聴器の支給を受けることができます。ただし、支給される補聴器の種類や金額には、障害の等級に応じた上限が定められています。
対象となる方
以下のいずれかの聴力の方が対象となります。
- 両耳の聴力レベルが70デシベル以上の方
- 一側耳の聴力レベルが90デシベル以上、かつ他側の聴力レベルが50デシベル以上の方
- 両耳による最良の語音明瞭度が50%以下の方
申請の流れ
この制度を利用するためには、まず「身体障がい者手帳」の申請が必要です。
- 指定医の診断と「手帳交付の意見書」の記入:お住いの市の福祉課窓口で「手帳交付の意見書」の用紙をもらい、都道府県が指定した医師(当院のような指定医)の診察・検査を受け、身体障がいの対象となる場合に、「手帳交付の意見書」を記入してもらいます。
- 手帳の申請:お住まいの市の福祉課窓口に「手帳交付の意見書」「申請書」などの所定の書類を提出して、手帳の申請を行います。
- 手帳の交付:2か月程度で手帳が交付されます。
- 「補聴器の見積書」の作成の依頼:手帳が交付された後、補聴器販売店で「補聴器の見積書」を作成してもらいます。
- 「補聴器の支給券」申請と交付:手帳が交付された後、お住いの市の福祉課窓口に、先ほどの「補聴器の見積書」を提出して、「補聴器の支給券」の申請を行います。1か月程度で「補聴器の支給券」が交付されます。
- 補聴器の受け取り:交付された「補聴器の支給券」を、見積書を作成してもらった補聴器販売店に持参し、補聴器を受け取ります。
(※なお、以上の流れは基本的な手順であり、各市により異なる場合があります。詳しくはお住いの市の福祉課窓口でご確認をお願いします。)
手続きには少し時間がかかりますが、医療費控除に比べて経済的負担が少なくなりやすいことが特徴です。「自分の聞こえで手帳が取れるのかしら?」と不安な方は、まずは検査を受けて医師に相談してみてください。
3.自治体独自の助成制度
最近、増えてきているのが、各市区町村が独自に行っている助成制度です。
どのような制度?
「身体障がい者手帳の基準には当てはまらないけれど、聞こえにくくて困っている高齢者」を対象に、補聴器の購入費用の一部(数万円程度など)を補助する自治体が増えています。
自治体によって内容はさまざま
この制度は、住んでいる場所によって「ある・なし」が分かれます。また、「住民税が非課税であること」などの所得制限や、「医師の証明書があること」といった条件が設けられていることが一般的です。
例えば守口市では、最大25,000円が補助されますが、条件は以下のようになっています。(2026年8月の情報)
- 守口市に居住する65歳以上の方
- 身体障がい者手帳(聴覚)の交付対象者ではない方
- 耳鼻咽喉科の医師から補聴器の使用の必要性を認められた方
- 介護保険料を滞納していない方
- この助成を過去に受けたことがない方
なお、2026年8月現在、近隣の京阪沿線でこの助成制度を実施しているのは、上記の守口以外では、交野市・枚方市のみです。寝屋川市では残念ながらまだですが、将来的には始まる可能性はあります。各市のこの助成制度の詳細は、下記の案内に掲載しておりますので、ご参照ください。
補聴器相談医の役割が大切
ここまでご紹介したどの制度を利用するにしても、共通して欠かせないのが「医師との連携」です。
- 医療費控除を受けるための書類
- 身体障がい者手帳のための意見書
- 自治体助成のための証明書
これらはすべて、耳鼻咽喉科医が現在の聞こえの状態を正しく診察し、検査した結果に基づいて作成するものです。補聴器相談医の資格を有している耳鼻咽喉科医ならば、スムーズに補聴器の購入までたどり着けると思います。
「お金の相談をするのは恥ずかしい」とは思わず、公的補助を使ってできるだけ負担を減らして、最適な聞こえを手に入れていただくためのサポーターとして、ご相談いただければと思います。費用に関する不安も、大切な診察の一部だと考えています。
補聴器を「未来への投資」として考える
確かに補聴器は、決して安い買い物ではありません。しかし、補聴器を使うことで得られるメリットを思い出してみてください。
- 家族や友人との楽しい会話
- 趣味や外出への意欲
- 街中を安心して歩ける安全
- 脳の活性化と認知症の予防
これらは、お金には代えがたい豊かな人生そのものです。公的な補助制度を賢く利用しつつ、補聴器を「これからの人生をもっと楽しく、健康に過ごすための大切な投資」として捉えていただければ幸いです。
最後に
全5回にわたってお届けした「補聴器を知るためのコラム」、いかがでしたでしょうか。
- 購入前の聞こえの把握
- 自分に合った選び方
- 慣れるためのフィッティング
- 長持ちさせるメンテナンス
- 費用を支える公的補助
補聴器を選ぶためにこんなにいろいろしないといけないの?と思われるかもしれませんが、一つひとつ順を追って進めていけば、決して難しいことではありません。
もし今、「どうしようかな」と迷っているのなら、まずは一度、現在の耳の状態をチェックすることから始めてみることをおすすめします。
まずは、当院のような補聴器相談医に相談することから始めていただければと思います。







